皆さんこんにちは!
上海在住20年になるワーママライターのもりむらきよかです。
今日は私が住む上海の方言「上海話」について書いてみたいと思います。
方言の一つと侮るなかれ。
中国語の標準語である「普通話」とはかなりかけ離れており、もはや違う言語?!という域。
なにしろ同じ中国人でもほかの地域の人は殆ど聞き取れないほどなのです。
上海話にまつわるエピソードあれこれ、お楽しみください!
上海話ってどんな言葉??
上海で話されている上海話。
これは、三国時代に呉と呼ばれた国で話されていた言葉が起源になっており、現在の上海や浙江省、江蘇省の一部などで話されています。
上海話の特徴で最も顕著なのが、中国語の標準語である普通話にはある「巻き舌音」がないこと。
また、普通話にはない促音、日本語でいう「っ」などの詰まる音があるということも特徴の一つです。
だから、日本人にとっては普通話よりも発音がしやすかったりします。
日本では「方言萌え」などというワードも存在するくらい、方言を話す人に魅力を感じる人が多いですよね。
京都弁や博多弁なんかが人気上位のようです。
では、上海語は中国の中でどのようなイメージを持たれているのでしょうか。
それは、一言でいうと嗲(ディアー)!
中国語で「甘えたさん」みたいな意味です。
若い女性がかわいらしく甘えている感じですね。
巻き舌音がなくどちらかというと平たい発音が多いせいか、中国の中ではかわいらしい、たおやかなイメージで見られていることが多いようです。
私の大好きなC-POPスターの周傑倫(JAY)の歌に「上海1943」という曲があるのですが、
その歌にも上海話を表現した歌詞があります。
♪说着一口吴侬软语的姑娘缓缓走过外滩~♪
(たおやかな言葉す女の子がゆっくりと外灘を歩いていくよ~)
吴侬 というのは上海を含む上海話が話されている地域のこと、そして软语というのは、日本の漢字で書くと「軟語」、そのまま「柔らかな言葉」ということです。
「吴侬软语」という言葉があるくらい、上海話は中国人の中で「たおやか」みたいなイメージなのだと思います。
ただし!!!
実はこれ、いい意味だけではなく、どちらかというと「ぶりっこ」「媚を打ってる」みたいなイメージで使われることが多いです(^▽^;)
つまり、上海語に対するイメージもそういう側面もあるということですね(笑)
こんなに違う!普通話と上海話
私が初めて上海の地を踏んだのは今から約20年前。
大学の交換留学生として中国語の勉強をするためでした。
大学の第一外国語はもちろん中国語を選択し、夏休みを利用して1か月ほど北京へ短期留学した経験もあったので、基本のキの字くらいは中国語ができると自負していました。
しかし!
空港まで迎えに来てくれた友人のお姉さんと運転手さんの会話が何一つ聞き取れずひどくショックを受けたことを覚えています。
でも、今考えたらそんなの当たりまえ。
ネイティブの中国人ですら、上海話圏以外の人にとっては外国語も当然なのですから。
上海話が普通話(標準語)とどのくらい違うかと言いますと・・・
例えば、「我是日本人(私は日本人です)」この、自己紹介に必須な中国語フレーズは、
- 普通話:ぅおーしーりーべんれん
- 上海話:んごずさぱにん
ね、絶望的にちがうでしょ(笑)
他にも、例えば「洗手间在哪里?(トイレはどこですか?)」こんな旅行に役立つフレーズも
- 普通話:しーしょうじぇんざいなーりー
- 上海話:しそげららありった
もう、笑ってしまうほど違うのです(笑)
わかりやすくあえてひらがな表記にしていますので、実際の発音とは若干異なる部分もありますが、普通話と上海話の違いは実感していただけたかと思います。
上海人は日本語がお上手?!
古代の呉の国の言葉が上海語のルーツとなっているというお話を先ほどしましたが、
実は日本語の漢字の発音もこの呉の国の言葉がもとになっているものが多いのです。
日本の漢字の多くは5,6世紀に江蘇省や浙江省、つまり呉の言葉を話す地域からもたらされたといわれています。
一方、中国語の普通話は清王朝末期ごろから、近代国家建設のために中国全土共通語の必要性が高まり、当時北京の朝廷で話されていた言葉をベースにつくられた新しい言葉。
そのため、日本語の漢字の発音は古い呉の発音が残る上海話との共通点の方が多いのです。
例えば、「杏仁豆腐」。中華スイーツの定番ですよね。
これを普通話で発音すると「しんれんどうふ」
でも上海話の発音だと「あんにんどうふ」
ほら!!!日本語と全く一緒でしょ??(笑)
また、前述のとおり上海話には巻き舌音がなく促音があるなど話す時の口と舌の使いかたが日本語と近い部分もあるかもしれません。
そのせいなのか、私の個人的印象としては、上海話を話すひとは日本語の発音がきれいな気がします・・。
ちなみにうちの旦那はバリバリの上海話スピーカーですが、新婚旅行で初めて日本に行った時、旅館の中居さんに「どちらからいらしたのですか?」と聞かれ「中国です」と答えたところ、その後の会話がなんだかかみ合わない・・。
広島がどうこう、とか・・・。
よく聞いてみると、どうやら日本の「中国地方」出身だと勘違いされていたようでした(笑)
まあ、中居さんの盛大なリップサービスだった可能性も大ですけどね(笑)
私と息子と上海語
上海に来た当初は全く持って上海話を理解できなかった私ですが、20年という長い年月の中で、自然とヒアリング力は上がっていき、今では日常生活程度であれば聞きとれるようになりました。
特に息子が生まれてからのこの10年でレベルがアップした気がします。
というのも、旦那と息子の会話は100%上海話。
家の中は
私←日本語→息子・私←日本語→旦那・息子←上海語→旦那
という複雑な言語環境になっており、息子と旦那の会話を聞いているうちに自然にヒアリング力が伸びていったようです。
ちなみに息子は上海のインターナショナルスクールに通っているため学校では英語がメイン。
日本語、普通話、上海話、英語。
どれもコミュニケーション上は特に問題がありません。
でも、これをアカデミックなレベルで維持しようとするとかなり大変で、下手したらどの言語も中途半端になってしまう可能性も・・。
マルチリンガル教育も、私の子育ての中で重要なテーマとなっています。
上海語にまつわるエトセトラ
最後に、私が体験した上海語にまつわるエピソードをご紹介します!
それは私と旦那が結婚してまだ新婚と言える時期。
義実家で夕飯をご馳走になっていた時のこと。
義父も義母も義兄ももちろん生粋の上海人。
家族の会話は完全に上海語なのですが、私に気を使ってところどころ普通話で話してくれることもありました。
いつしか、「普通話でしゃべっているときは私も会話に加わるべき」という暗黙のルールができていったのです。
そしてその日も、たまーに「普通話」の会話に参加しながら、「上海話」の部分は完全に右から左と聞き流しながらもくもくとご飯を食べていたのですが・・。
なんだか聞き流せないワードが続々と登場してきます。
「日本人」とか「戦争」とか「侵略」とか・・・。
その頃日本兵の残虐ぶりを露骨に表現した戦争ドラマが中高年の間で爆発的に流行していたこともあり、義父は日本の過去の過ちについて興奮気味に話していたのです。
もちろん、私にはわからないように上海話で。
でも、困ったことに、私その時点で大体の話の内容はわかるくらいには上海話が聞き取れるようになっていたのですね(;^ω^)
旦那もそれを知っていたので、私に目配せしながら「お父さん、〇〇(私の名前)もいるからその話は・・」と義父の話を遮ったのですが、それで私が上海話を理解できているとわかったお義父さんの気まずそうな顔と言ったら・・・!!!
「これはドラマの話で実際は違うんだ」とかしどろもどろに言い訳していましたが(笑)
義父も悪気があって話したのではないということはわかっていたので、私も特に気にしていませんでしたが、その後ずっとなんとなーく気まずい雰囲気がしばらく続いたのでした(-_-;)
言葉がわかってしまうと、知らなくていいことまで知ってしまうこともある、と気づいたエピソードでした(笑)
上海は第二の故郷
上海話の歴史から、私のいらん体験まで、上海話にまつわるあれこれをお届けしてまいりました。
まぁ、なんだかんだ言って人生の半分近くを上海で暮らしてきたわけで。
やっぱり アイラブ上海! なのです!